メビウス 描線がつなぐヨーロッパと日本 報告

先日、フランスの有名な漫画家・イラストレーター メビウス氏の講演に行ってきました。

http://www.meiji.ac.jp/koho/hus/html/dtl_0004084.html

メビウスの大ファンだという、浦沢直樹さん、評論家の夏目房之介さんとの対談形式で、会場は1000人あまりの人々で埋め尽くされました。

メビウスさんは、少年時代のメキシコ滞在経験、アメコミからの影響などを受け、最初ウェスタン(西部劇)のジャンルで作品を発表。これがフランスで大きな反響を呼ぶ。

彼がやろうとしていたことは、バンドシネ(BD)http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%87%E3%82%B7%E3%83%8D の中で、子供向けのBDとアート的なイラストレーションをつなげることと、表現の自由さを求めることだという。一種の文化的な革命であり、思想的な革命でもあったと思う。(夏目氏が、60年代から70年代の劇画や漫画が、若者のカウンターカルチャー(対抗文化)として発達したというコメントをしていたが、まさに芸術運動というのは、社会思想と親和性が強いのである)

個人的な感想を述べると、メビウスさんの絵というか描線は、とても繊細で、キャラクターも、リアルなのだが、どこか漫画チックなのだ。そして、影の付け方、パースの取り方、配置の仕方に、ソフトであって、広がりがあるような、そんな印象を与える。

メビウスさんの作品に大きな影響を受けたのが、大友克洋さん。彼のAKIRA

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が、欧州で大ヒットしたのも、もともとBDにメビウスさんのような絵柄があり、受け入れやすかった土壌があったことも、ここで納得した。

浦沢さん[rakuten:hyoutan:10007245:detail]は、大のメビウスファンで、自身もかなりのメビウスコレクター。同じクリエーターとして、メビウスの絵から影響を受けたことをかくさない。とくに、影や線描は、メビウスさんの絵と比較すると、影響があることがわかる。

ドラゴンボール

鳥山明氏も、メビウス・チルドレンだという。

Arzach

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 比べてみると、確かに似ている。

初来日は手塚治虫の招待で、京都観光もしたとか。日本通で、今回が一番楽しかったという、会期中72歳を迎えられた氏は、非常に礼儀正しいおじいさまだった。

宮崎駿の『ナウシカ』にも影響が見られるということを、司会者の藤本由香里さんや他の宣伝でも言及されていたが、それについては一切コメントがなかった。

とにかく、メビウスさんは、BDと日本の漫画研究、そしてマンガ原作のアニメ研究には、重要な人物なのだ。