商業アニメの過去と現在 1

6月27,28日は、神戸芸術工科大学日本アニメーション学会の第11回大会が行われました。

アニメーションを作る人、それをプロモートする人、そしてアニメーションを研究する人など他分野の人々が会員となっているこの学会ですが、まだまだその名はあまり知られておらず、会員数も二百十余名です。

それでも、第一線で活躍中のアニメーターやアニメ関係の人々にお会いできるのが、この学会のユニークなところでしょうか。

その講演会に行ってきました。

まず第一部は、脚本家で推理作家でもある辻真先さん。

大学卒業後、NHKに入社、その後アニメのシナリオ(「サイボーグ009」やその他初期の頃のTVアニメ作品にたずさわる)を書き始めて、今日に至っている。その頃は、大卒でアニメの仕事をするような人は、マイノリティだったため、よくからかわれたのだとか。そして、NHKをやめてアニメの仕事をするなんて、と驚かれたそうで、昔のアニメも今のアニメも軽侮の対象だったことが垣間見えます。

アニメがこれほどまでに、大きなビジネスとして発展しなければ、今でも軽侮の対象だったんでしょうね。(とはいえ、まだまだアニメをばかにしている人、アニメを見るのは、オタクばかり、と思っている人は多いですね)

さて、本題です。辻さんは、脚本家という立場から、ワンクール(約13回)のテレビアニメ脚本を書くのに、どのような構成をするといいのか、というお話をしてくださいました。

お好きなアニメは、「大江戸ロケット」「電脳コイル」などで、そのSF的なところを、SF作品の例を挙げ、説明してくださったのですが、面白かったのは、裏事情と、回数の構成で、お遊び回や引き伸ばし回などが入るエピソード。

裏事情というのは、スポンサーなどの意向で、作品が縮められたり、伸ばされたりすること。映画だと、人気がでると続編が作られるのと同じメカニズムです。テレビも、当初の予定より縮めてほしい、人気がでているので伸ばしてほしい、など、脚本家はいろいろと注文を受け、それに応えていかなければならず、非常に苦労したということをおっしゃっていました。

それはそうだなあ。。。と。今でこそ、脚本家は本当にたくさんいますが、アニメ作品の数が増え、しかもテレビは時間の勝負なので、すぐに変更、すぐに完成、納品しないと間に合いません。そういう裏事情で、作品のプロットが変わったり、キャラクターが増えたり、減ったりという影響があるのは、当然のことながら、そこから作品を見ていくというのも、面白い視点ですね。

そして、お遊び回のこと。辻さんのお気に入りは、「電脳コイル」のちょうど折り返し回、第13回 「ダイチ、発毛す」。

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これを抜いても、メインプロットにはあまり影響はないのですが、ちょっとスタッフのお遊びというか、一息つきましょう、という雰囲気が伝わる楽しい回で、非常に気に入っているそうです。

これからは折り返し地点、第6回、第12回、などを注目していくと、面白いかもしれません。