日本アニメの紹介ースペイン講演

*2007年11月に書いたブログ記事の再掲です。

「最新日本アニメの紹介ー陶山恵さんの講演」

2007年11月1−4日、スペインで最大のマンガ・アニメファンの祭典「サロン・デル・マンガ」がバルセロナで開かれました。私はそこに初めて行ってみました。

大きな会場に、たくさんのブースがあり、ほとんどがマンガ本やアニメDVDを販売する出版社や会社のブースです。欧米では、マンガ本やDVDは非常に高価なので、日本のように気軽に変えないのですが、ここでは特価があったり、好きなものをまとめて買えたり、ポスターなどのおまけがついていたりとファンが喜ぶもの満載です。

そのほかに、マンガ、アニメに関するキャラクターグッズ、マンガ専門学校、フィギュア人形制作アーチストのブース、日本文化紹介ブース(ゲームから観光まで)、日本グッズ販売(着物など。でも中国と韓国もごっちゃでした)、日本食販売ブース(非常に高価!)などもでていました。

それらの販売などと同時に、いろいろなイベントが催されます。コスプレコンテスト、カラオケ、ゲームのデモンストレーション、そして、今日お話しするアニメに関する講演です。

●講演「最新日本アニメの紹介」
講師は大学でアニメーションを教えてらっしゃる陶山恵(すやま・けい)さん。手違いから、「日本のアニメ史」とカタログには書かれていたが、自分は歴史を話すつもりで来ていないということを仰っていた。最新のアニメになじみのないスペイン人に、最新の日本のアニメ技術を使用した作品の紹介と、陶山さんの大学の学生の作品を紹介くださった。

陶山さんが強調していた、日本アニメの特徴は「物語性」の重視。その例として、アニメ映画「時をかける少女」(2006年)を紹介する。

時をかける少女 通常版 [DVD]

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前評判はなかったが、公開されると非常に人気が出て、ロングラン公開になったのは、物語性の重視、物語と主人公の少女の細かい描写が、共感を生んだのだろうということだった。

そのほか、湯浅監督の「マインドゲーム」、「鉄コン筋クリート」(これは日本のスタジオで、米国人の監督マイケル・アリアスが作った、成功例)を紹介。スペインではまだ公開されていないものなので、皆興味深そうに見ていた。

そして、彼女の学生さんの作品3点。タイトルは忘れてしまったが、渡辺美里の「マイ・レボリューション」に乗せた短編、大学生2人のたわいない会話を、映像で表現した「はなしのはな」、そして「牛の日」という、非常にシュールな中篇を紹介。とても面白かった。

アニメで何かを表現する。その根本には、表現したいもの、伝えたい思いが強くあり、その丁寧な描写が、日本アニメの人気を支えているのだと言う。

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講演の後、少し質問させていただいた。以前ロンドンでヘレンさんに伺っていたことで、気になっていたこと。それは「日本のアニメ作品には、人間や機械の関係やアイデンティティ(自分とは何か、存在とは何か、人間とは何か)を問うものが多いが、なぜか?」というものだった。

陶山さんは、「日本は手塚の「鉄腕アトム」で、もう機械を人間の友人として描いていたから、それが大きい」とおっしゃった。確かに西洋では、労働機会を奪うもの、そして人間性を奪うものとして、機械は人間と対峙されるが、アトムの存在で、日本には、機械を悪、人間の敵とするものは、あまりない。

内省に向かう傾向は、私は学校制度、会社の労働形態にみる個の喪失と、一定の宗教観が欠如している事だと思っているが、これについての質問をする時間が、残念ながらなかった。

アニメーションを研究したいというひとは、このような講演に足を運び、いろいろ自分の考えを質問してみたらいかがだろう?きっと得るものは大きいと思う。