アニメーションを研究するには?

アニメーション作品を研究したいけれども、どうやっていいかわからない、という意見をよく聞く。ここでは、大学生、大学院生など、学術的にアニメーションを研究したいという人向きに、方法論をご紹介していきたい。

以前にも触れたように、アニメーションを小説などと同じようにテキストとして研究する仕方を中心に、話を進めたい。

アニメーション作品を小説などと同じように、一つのテキストとして研究する人たちは多い。日本語でも翻訳が出ているスーザン・ネイピア氏などは、よくも悪くもパイオニアとして、たびたび批判されたりするが、主要な講演には頻繁に招待されたりする、アニメーション研究の第一人者だ。

彼女のアプローチは、まさしくアニメをテキスト分析し、日本文化、日本社会を論じるというもの。それは、彼女が日本文学研究者であることからも、そのアプローチがきわめて文学的方法論をとっていることがわかる。

彼女は、著書ANIME: from Akira to Princess Mononoke (増補版 ANIME:from Akira to Howl's Moving Castle)米国で入手可能な日本のアニメ作品を、タイプに分け、その共通するテーマやモチーフから、アニメ作品と日本文化(歌舞伎、俳句などの伝統文化から末法思想などの哲学まで)を論じている。

現代日本のアニメ―『AKIRA』から『千と千尋の神隠し』まで (中公叢書)

現代日本のアニメ―『AKIRA』から『千と千尋の神隠し』まで (中公叢書)

 (翻訳本で読める。)

こうしたアプローチは、文学を研究するやり方と同じなので、とっつきやすいかもしれない。作品が書かれた背景、社会状況、作品内での解釈(タイプ別に作品を分類)など見ていくやり方だ。だが、作品の選択に問題があったり、非日本人がやりがちな、無理やり日本の伝統文化と結びつけたりという批判はある。それでも、彼女のアニメ研究に及ぼした影響は大きい。

そのような文学的アプローチには、他にも様々に考えられるものがある。例えば、
1)作家研究:これはもう古いと言う研究家もいる。が、作家性が強い作品には、作家(監督)が歩んだ時代背景、哲学、家族、影響を受けた作家、作品などから、作品のテーマに隠された意図を探るやり方が、効果的な場合が多い。

2)原作との比較研究:アニメ作品には、マンガや小説が原作になっている場合が多い。実写映画にも言えることだが、原作との違いから、監督の意図を探る方法。

3)精神分析的研究:フロイトラカンユングといった心理学を使用して、作品内の登場人物などを精神分析していく方法。日本では精神科医斉藤環氏が、この方法と臨床医としての実践経験からアニメやマンガを分析している。

4)社会、歴史的コンテクスト研究:戦時中の作品を分析する時など、効果的と思われる。プロパガンダ国民国家形成など、戦時中は特に顕著に政府の政策が、作品に反映されることがあったため。アニメは特に植民地政策の一環として、教育の道具として使用されていた。

5)ジェンダー研究:作品分析の中で、特にジェンダーに注目。男性性、女性性、クイアなど、性にまつわる表象を探っていく。

などなど、これら複数の方法を取ってアプローチしたり、そのほかの要素を取り上げて研究するなど、いくつかの方法がある。まずは自分が何を探りたいのか、何を明らかにしたいのか、その問題点を明確にし、いくつかの方法論を考えて、一番効果的と思われるものを選択するといいだろう。