デジタルアニメーションの現在形
日本アニメーション学会 シンポジウム 報告
「デジタルアニメーションの現在形」
桑沢デザイン研究所【渋谷】で開かれた、日本アニメーション学会主催のこのシンポジウム、会場はクリエーターを目指す学生さんが多く訪れていました。プロのアニメーターさん、脚本家、研究者など、様々な人たちが集い、盛況でした。
まず最初のパネリストは、Production I.G.の江面久さん。デジタルアニメの作り方を、表やグラフを使って、素人にもわかりやすく説明してくださいました。
主な要点は、デジタル技術が進むに従って、色、影、光など、いろいろなエフェクトが増えていき、リアル感の出し方や動かし方が洗練されていくということ
興味深かったのが、映像の作り方は、昔のフィルムカメラのルールが踏襲されていて、それが一つの制約になっていること。実は、フィルムカメラの時代は、背景とセルという二層があり、アニメが作られたのだが、今はすべてがコンピュータのデータとして存在する。つまり、層が一つのデータ上に存在する、ということ。それにも拘わらず、作り方のベーシックは、フィルムカメラのときと同じ概念から離れられないという。
パラダイムシフトが起きたら、例えば、企画や物語の作り方そのものが変わってくる、という、とてもスリリングなお話で終わり、非常にワクワクしました。もしかして、ルネサンスの遠近法発明のときの衝撃が、アニメで起きるかも!!なんて、一人で想像してしまいました。
次のパネリストは、IKIF+の木船徳光さん。あらゆるデジタルアニメを見せて下さり、デジタルアニメの今を解説して下さいました。特に興味を引いたのが、「POCOYO」
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最後のパネリストは、「ニャッキ」で有名な伊藤有壱さん。彼は横浜でスタジオを持ち、作品を作りつつ、大学でも教えていらっしゃる(実はパネリストの3人みな、大学でアニメ作りを教えている)、若手のアニメーターです。彼はどちらかというと、「手作り」感を大事に、デジタルでアニメを作っている派。例として、パク・ヨンハの「永遠」のミュージックビデオを取り上げて、実際の町並みに、クレイで作った人形を入れて、ファンタジーと現実の狭間の演出を、とても細かくこだわって作った様子を説明してくれました。
総じて、普段テレビなどで見かける映像って、デジタル処理が色々なところに使われていて、見る側は知らずにデジタルの絵になれているのだなあ、というのが良くわかりました。リアリティTVの出現でもよく議論されますが、リアル感とリアリティの演出って、デジタル技術が進んで、どんどんとリアルさが本物に近づくにつれ、リアリティが喪失していく現象が起きています。これからデジタルアニメーションが、どういう可能性を見せてくれるのか、一視聴者として、とても楽しみであります。