ファンタジー・フィルム(英国講義)
(注:2007年10月のブログで書いた記事をここに再掲します)
「日本のアニメーションとファンタジー映画」という講義をロンドンで聞いてきました。
レクチャラーは、クリス・フェルさんと、日本アニメを世界へ紹介したパイオニア的存在、ヘレン・マッカーシーさん。
ヘレンさんの本を読んだときには、若い方かなあと勝手に想像していたのですが、実は年配の、でもとてもエネルギッシュなかわいらしい方。講義の後に少しお話させていただいたら、なんと日本語は話せない、読めない、ということ。それであのアニメの知識量なんて、すごい、としかいいようがありません。
とても面白い講義だったので、一人ずつまとめてみます。
●クリス・フェル氏「日本のファンタジーフィルム」
ファンタジー映画というと、内容がファンタジーである映画のことをさすのかと思っていたら、実写映画に、CGや特撮などを含めたものを「ファンタジー映画」と呼ぶらしい。(でも、ジャンル化には各人違う見解があるので、固定的呼び名とまではいかない、とは友人の研究者の言。でもここでは、彼の言うファンタジー映画という意味で使います。)
まず、彼はざっとファンタジーフィルムの歴史を概観する。
1)1954年「ゴジラ」−>これが日本初のファンタジーフィルム。
2)スーツメーションと呼ばれる、いわゆるスーツアクションもの。例として、「ウルトラマン」シリーズが挙げられる。
3)J-horror。例として「リング」と三池崇史の映画。
そして、ここからフォーカスは、三池作品にうつる。実はJホラーというジャンルは、90年代の各地映画祭で、非常に重要なジャンルだったということ。というのは、映画祭でしか見られない、人気のある日本映画のジャンルで、当時はDVDなどが英国であまり発売されなかったからだという。
そして、日本のファンタジーフィルムには、他の国には見られない、独特の超自然の物語、効果と恐怖の提示の仕方が卓越で、プロットが簡単(だから観客がついてこれる)という特徴があった。
三池作品でホラーとして定番なのが、「オーディション」。同じ崩壊した家族を描いた「リング」とは、また違った不気味さを描いている。
そして、実験的映画「カタクリ家の幸福」。次々と起こる自殺や殺人を、ミュージカル仕立てにした、異例な作品。こうしたあたらしい奇抜なアイデアが、日本映画Jホラーに特有なんだとか。
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そして、クリスさんお気に入りの「ファンキー・フォレスト」。これは筆者は、まだ観た事ないのだけれど、かなりシュールな作品。オムニバスで、いわゆるナンセンスものです。そして、極め付けが「WAR100%」。(岸田今日子がなんともいい味を出していた。)
この分野では、世界のマーケットでも、日本映画が占めているという。ユーモアのセンス、独自の新しいアイデアが、他国の追随を許さず、ついにはハリウッドがリメイクするような自体になっている、J-ホラー、ファンタジー映画は注目株だそうだ。
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ざっとまとめるとこんな感じでした。日本のファンタジー映画のマーケットシェアが世界一というのは、アニメの状況と似ているなと思います。だからこそ、今回のテーマはつながるのか、と納得。
でも、ちょっと疑問も残ります。ファンタジー映画とJ-ホラーが、最後のほうはほぼ同義に使われていたので、誤解を生むのではないかなあということが一つ。
もう一つは、「デスノート」(実写映画)が、ホラー映画として紹介されていたこと。あれって、ホラー????ディテクティブ、サスペンス・・・のほうが近いのでは???
でも、クリスさんの講義を聞いて、がぜん三池がもっと見たくなりました。以前は怖いというイメージで、敬遠していたのだけど、ナンセンスものがとっても見たいなあと思います。
アニメの原作が、ファンタジーフィルムに使われていることも多く、また、アニメの技術が使用されていることも多く、ファンタジーフィルムとアニメーションは、密接な関係にあります。
以前の回にも書きましたが、ナラティブトーンの変化の点で、非常に面白い題材です。
次回は、ヘレンさんのアニメーションの講義について、書きましょう。