研究ノート 日本におけるコードとしての「執事」

「日本におけるコードとしての「執事」」

今ドラマで『メイちゃんの執事』が放映されているので、おそらくもう認知されているであろう、「執事」。これは実は少女漫画が原作だ。

メイちゃんの執事は、学園ものですが、日本には「執事喫茶」なる、コンセプト喫茶店が存在する。先日、私もこの執事喫茶に入ってみた。

http://butlers-cafe.jp/
↑有名な執事喫茶。日本で初めて開店した執事喫茶らしい。

行ってみると、外には列が。この日は予約でいっぱいなので、その列はキャンセル待ちだそうだ。予約は前日しかできないので、かなり気合を入れて前日から臨戦態勢にならなければいけない。

執事喫茶は、いろいろと条件が決まっている。この「お約束事」(またはコード)を前提に、シチュエーションが作られる。ここで「くだらない」として、コードを無視しては、もうゲーム脱落である。

玄関ではまず受付のベルマンが迎えてくれる。ドアは二つ。ベルマンに促されて、暗い廊下の先のドアを入ると、中でフットマンと呼ばれる男性に説明を受ける。時間のこと、勝手に歩き回らないこと、会計のことなど。コートはここで預ける。

そして、注文。メニューはセットものを一つ頼み、そのほかにもサイドオーダーがある。(HP参照)食事やデザートのセットで、お値段もかなりお高いが、お味もなかなかなので、まあ妥当でしょう。メニューは、英国の文学(シェイクスピア)やギリシャ神話などから名づけたものが多く、これも女性好みの雰囲気をかもしだしている。制限時間は80分。予約延長はできないようだ。わたし達の担当フットマンは、不慣れな感じで、覚えたての丁寧語を一生懸命使っていた。選んだデザートに合う紅茶は何か、と聞いても答えられず、紅茶の種類を説明するだけ。たぶん、マニュアルになかったんだろうなあと、ちょっと同情。

それでも、興味があったので、いろいろ質問してみた。執事長のことを聞くと、今は不在だとのこと。席は予約順(ソファーとカーテンのあるテーブルもある)なので、選べないことなどなど。。。。

紅茶を頼むと、ティーポットで来る。これも自分で注いではだめ。フットマンをベルで呼び出す。トイレに行くにもベルで呼び出す。自律してはいけないのだ。

客層は圧倒的に女性が多いが、男女のカップルもちらほら。一番多かったのは、女性一人。それも10−20代の若い女性が多かった。

フットマンは、そういう真面目な新人から、慣れているジョークの好きな人もいて、常連さんはもういろいろな人と話していた。

そうこうしているうち、もう時間が来たが、私たちにはなかなか声がかからず、しばらくぼーっと座っていた。(フットマンが呼びに来ないと、席を立ってはいけない)。

かなり時間オーバーで、やっと担当が「乗馬のお時間です」と迎えに来た。(予約の時、退出の設定を乗馬にしておいたため。)

そして、わずかの間の夢の時間は終わった。内装は、英国貴族の館をイメージしたもののようで、以前行った秋葉のメイド喫茶が、学園祭の喫茶店みたいなものだったのに比べると、場の雰囲気が本物っぽい、ということが、女性客の快楽のポイントだと実感する。メイド喫茶は、メイドさんとの関係が重要で、場の雰囲気はそれほど重要でないのかもしれない。

ジェンダー的な主体の作られ方が、執事喫茶メイド喫茶の差に見られる。女性客をメインターゲットにしている執事喫茶は、「西洋的雰囲気」「静かな落ち着いた空間」「お嬢様気分を味わえる主従関係+異性愛恋愛関係」。対照的に、メイド喫茶は、雰囲気はあまり重要でなく、「メイドと遊べる、「僕だけの」メイドさん」、「主人気分を味わえる主従関係+異性愛恋愛関係」「萌えの対象となる、タイプ別キャラ設定」。

詳細はまた別の機会にゆずるとして、全体的に執事喫茶に見られる「関係性」とメイド喫茶に見られる「個とフェティシズム」は、客のジェンダー形成に深く結び付いていると思う。

執事喫茶についての漫画は立野真琴「ハッピーボーイズ」rakuten:ubook:10522211が面白い。典型的なリアルでない設定だが、執事というコードを端的に表現している作品である。以下は、ドラマ番。

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